リオハ、バスク地方(北部地方)の特徴、当たり年やおすすめワインまとめ
2018.09.04 公開 | 2018.09.04 更新

北部地方(リオハ・バスク)は、スペインで最もワインの生産量が多い、イベリア半島北部にある銘醸地です。
北東にナバーラ州、南東にアラゴン州、西南にカスティーリャ・イ・レオン州と接しており、フランス国境近くに位置しています。地域ごとにテロワールが異なり、基本的に温暖で雨が多く、ワイン造りに適した環境です。
19世紀には、フィロキセラの被害から免れるために移住してきたフランス人の技術導入もあって、バラエティに富んだワインが造られるようになりました。
今回はスペインの北部地方(リオハ・バスク)について、詳しくご紹介します。
目次
北部地方(リオハ・バスク)のワインについて
瓶詰後1年以内が飲み頃の若飲みタイプから、15年以上の長期熟成に耐えるワインまで幅広く生産しており、赤ワインが主流です。特にD.O.Ca.リオハで造られるワインは、長い伝統があり品質が高く、スペインで一番売れているワインとなっています。
近年のトピックスとしては、リオハ特選原産地呼称委員会による、D.O.Ca.リオハのワイン規則改定が、2018年2月に発表されました。
この改定により、「リオハ・バハ」と呼ばれていた地域が「リオハ・オリエンタル」と改称されました。また、条件を満たせば「村名」や「地区名」、「単一畑」での表示もできるようになります。
「クリアンサ」や「グラン・レゼルバ」といった熟成期間の定義の見直しや、リオハ産スパークリングワインの生産許可も発表されており、これらの改定は2019年1月1日から生産者に義務付けられる予定です。
生産されているブドウ品種
北部地方(リオハ・バスク)では、黒ブドウの生産が全体の70%以上を占めています。
主にスペインの高級ブドウとして知られる「テンプラニーリョ」が主要品種です。
テンプラニーリョは成熟が早いブドウ品種で、フレッシュで口当たりの良いワインに仕上がります。長期の樽熟成にも耐えることができ、北部地方(リオハ・バスク)に限らず、スペイン全土で愛されているブドウ品種となっています。
白ブドウでは「ビウラ(マカベオ)」が主要品種です。北部地方(リオハ・バスク)では単独で使われることが多く、フルーティで豊かな香りと酸味を持ちつつ、高いアルコール度を誇るワインが造られます。
北部地方(リオハ・バスク)で栽培されている主なブドウ品種は、以下の6品種です。
- テンプラニーリョ
- ガルナッチャ・ティンタ
- マスエロ(カリニェナ)
- ビウラ(マカベオ)
- マルバシア
- ガルナッチャ・ブランカ
2007年には新たに9品種が認定され、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった外来種も栽培されるようになっています。
北部地方(リオハ・バスク)のテロワールについて
地域ごとにテロワールが異なり、北部は海洋性気候で雨が多く温暖で、南部や中央部は地中海性気候で雨が少なく乾燥しています。
基本的には温暖で雨が多い気候となっており、年間を通してブドウの育成に適した環境が整っています。年間降水量は約400mmで、標高は最も高いところで約700mです。
北部地方(リオハ・バスク)の中でも、特に生産量の多いD.O.Ca.リオハを具体例として、各地のテロワールをご紹介します。
リオハ・アルタ
海洋性気候で、気温が低く雨が多い地域です。エブロ河上流に位置し、土壌は粘土石灰質、沖積土、含鉄粘土質の3つのタイプの土壌があります。
ワインのアルコール度は中程度で、コクがあり酸味が強いのが特徴です。樽熟成に向いた上質なワイン造りが行われています。
リオハ・アラベサ
リオハ・アルタ同様に海洋性気候で、気温が低く雨が多い地域です。エブロ河北岸に位置し、土壌は粘土石灰岩質で、斜面の土壌も見られます。
若飲みタイプも、樽熟成タイプも造れる万能型で、中程度のアルコール度と酸味を持つ赤ワインが造られています。
リオハ・オリエンタル(リオハ・バハ)
地中海性気候で、湿度が低く暑い地域です。エブロ河下流に位置し、土壌は沖積土と含鉄粘土質となっています。標高は300mほどと低く、平坦で面積も広くなっています。
ガルナッチャ種の栽培に適しており、アルコール度の高い赤・ロゼワインが造られています。2018年2月の規則改定により、「リオハ・バハ」から「リオハ・オリエンタル」に改称されました。
北部地方(リオハ・バスク)のワインの分類について
2009年のEUワイン法改定に伴い、スペインでは原産地呼称保護ワイン(D.O.P)と保護地理表示ワイン(I.G.P)による品質分類が行われています。
また、スペインでは樽と瓶の熟成期間に応じて、一般的なワインと高級ワイン(D.O.Ca、D.O.、V.G.I.G.)の「熟成期間表示」ができるようになっています。
一般的なワインは、600l以下のオーク樽か瓶を用いて、指定された期間熟成することで以下の3つの表示ができます。
● ノーブレ:18ヵ月以上熟成
● アニェホ:24ヵ月以上熟成
● ビエホ:36ヵ月以上熟成、酸化したニュアンスがあるもの
高級ワインは、330l以内のオーク樽を用いて、収穫年の10月1日から樽熟成を行い、さらに瓶内熟成を行うことで熟成期間表示ができます。
リオハは独自の熟成期間表示規定を定めており、内容は以下の4種類です。
● ホベン
樽熟成1年以内、または全く行わない
● クリアンサ
赤:2年熟成の内、樽熟成1年
白・ロゼ:2年熟成の内、樽熟成6ヵ月
● レセルバ
赤:3年熟成の内、樽熟成1年
白・ロゼ:2年熟成の内、樽熟成6ヵ月
● グラン・レセルバ
赤:5年熟成の内、樽熟成2年
白・ロゼ:4年熟成の内、樽熟成6ヵ月
※ワインの品質分類は2019年1月1日より、一部改定される予定です。
北部地方(リオハ・バスク)内の主な産地
北部地方(リオハ・バスク)の主なブドウ畑は、ラ・リオハ州、バスク州、ナバーラ州の3つの州にまたがっています。
総面積は6万3593ヘクタールで、大部分にあたる4万3855ヘクタールが、ラ・リオハ州に集中しています。ブドウ畑の範囲は東西に100km、南北に40kmと、あちこちに点在しているのが特徴です。
代表的な産地は、以下の通りです。
【ラ・リオハ州】
● リオハ・アルタ:エブロ河上流にある高級ワイン生産地
● リオハ・アラベサ:エブロ河北側にあり、バランスに優れたワインを生産する
● リオハ・オリエンタル(リオハ・バハ):エブロ河下流にあり、ガルナッチャ種のワインが有名
【バスク州】
● チャコリ・デ・アラバ:カスティーリャ・イ・レオン州に面した、2002年8月にD.O.認定された生産地
● チャコリ・デ・ビスカヤ:ビスカヤ県に350ヘクタールの畑があり、昔ながらの手作業でワインが造られる
● チャコリ・デ・ゲタリア:カンタブリア海に面した産地で、繊細で芳醇な微炭酸ワインが造られる
北部地方(リオハ・バスク)のワインの生産量
2017年度におけるスペインのスティルワインの輸入は、19.773lとなっており2016年度とほぼ同量です。
2016年8月〜2017年7月における、日本に対する輸出は16,2169hlでした。そのうちD.O.リオハに対する輸出は、全体の3%にあたる5,417hlとなっています。
北部地方(リオハ・バスク)の歴史
ラ・リオハ州とバスク州の歴史をご紹介します。
ラ・リオハ州
リオハのワイン造りの始まりは、スペイン全土同様にフェニキア人から伝えられました。
信頼できる最初の文献としては、1063年にカラオーラ司教のゴメサヌスによって出された「住民許可状」に、リオハの地でブドウ栽培からワインを造った記録が残っています。しかし、当時のワインは非常に品質が悪く、樽熟成や輸送に耐えられませんでした。
19世紀後半になると、フランスを始めとしてフィロキセラ害虫による被害が広まります。この影響を受けて、フランス・ボルドーからスペイン北部に移住してきた醸造家が、ワイン造りに従事したことにより、リオハのワインに技術革新がなされていきました。
1926年には、原産地呼称統制委員会が設立し、1933年にワイン法が施工されました。これはフランスのAOC法(1935年)より早く施行されています。
そして、1970年に原産地呼称(D.O.)規定が承認され、リオハはD.O.として認定されました。1991年4月3日には、初めての特選原産地呼称(D.O.Ca.)として認定されています。
バスク州
バスク州のワインと言えば「チャコリ」です。文献上では、9世紀にレテス・デ・ツゥデラで、ワインのようなものを生産している記述が残っています。
13〜15世紀ごろ、他地域のワインを持ち込むことが禁止する法律ができた背景もあって、アヤラ地区を中心にチャコリ用ブドウ栽培が盛んになりました。
20世紀には他地域同様にフィロキセラを始めとする病害が流行り、ブドウ畑のほとんどが消滅してしまい、チャコリの栽培は減少していきます。
しかし、1989年以降にバスク州内で3つの地域が原産地呼称(D.O.)認定されたことを受けて、チャコリの流通が活発になるようになりました。現代では、地元生産者の努力により、バスク州を代表するワインとしてチャコリが造り続けられています。
北部地方(リオハ・バスク)で特に有名なワイン
北部地方(リオハ・バスク)で特に有名なワインをご紹介します。
クネ リオハ クリアンサ
D.O.Caリオハの若飲みタイプの赤ワイン。スペインを代表するワイナリー「クネ社」による、エレガントでフレッシュな味わいのワインです。
クネ リオハ インペリアル グラン・レセルバ 2009
D.O.Caリオハの長期熟成タイプの赤ワイン。良好なヴィンテージでしか生産されない、貴重なスペインワインです。
チャコリ・チャルマン
D.O.チャコリ・デ・アラバで生産された、爽やかで軽い酸味のある白ワイン。オンダリビ・スリというブドウ品種を主原料としており、魚介類に合うワインとして人気です。
まとめ
スペインの北部地方(リオハ・バスク)は、テンプラニーリョ種を使った赤ワインが有名な産地です。歴史ある伝統を守りながらも、近年はワインの品質改善に関する動きが活発になっているので、ますます目が離せない注目の地方となっていくことでしょう。
同じ地域のワインでも、生産環境や熟成期間の違いによって味わいは全く異なります。スペイン北部地方(リオハ・バスク)のワインを初めて飲むなら、リオハの赤ワイン、チャコリの白ワインがおすすめです。
この記事を参考に、ぜひお気に入りのスペインワインを見つけてみてください。