マールボロ地方のワインの特徴、当たり年や主なワイナリーまとめ

Good Wine 編集部by Good Wine 編集部

2018.05.13 公開 | 2018.07.02 更新

ニュージーランドのブドウ産地として国内最大の栽培面積を持ち、また世界でも突出したソーヴィニヨン・ブランを輩出しているマールボロ(Marlborough)。

南島の東北端に位置するマールボロには、ブレナム(Blenheim)という人口3万人ほどの町を中心に大小合わせて137軒のワイナリーがあります。

ブドウを植えられるまで、不毛の大地と見捨てられていたこの地に、Montana(現在のBrancott Estate)が1973年に開墾したことがきっかけで、ニュージーランドといえばソーヴィニヨン・ブランというイメージを創り上げました。

マールボロワインについて

2018年2月、ブレナムの鉄道駅舎をThe Wine Stationにし、約80のワインを楽しめるハブ施設にしました。

Cellar doorとよばれる試飲スペースを持っていないワイナリーのワインを気軽に飲むことができるようになりました。

そして、地元民と観光客の交流の場所になっています。

順風満帆なワイン産業ですが、地震大国であるがゆえの苦悩も絶えません。

2016年Kaikoura沖大地震

2016年11月14日、マグニチュード7.8の大地震が、ブレナムから130キロ南に行った町、カイコウラ(Kaikoura)沖で発生しました。

深夜に発生した地震だったため、作業していた人はおらず、ワイナリーやブドウ畑でのけが人はいませんでした。

しかし、この地震による被害者は、死者2名、けが人は60名ほど。

カイコウラとブレナム、またカイコウラとクライストチャーチ(Christchurch)を結ぶ国道1号線が閉鎖されてしまい、マールボロの物流がほぼストップしてしまいました。

地震の揺れにより、全体の約2%、500万リットルものワインが流れてしまい、約20%の熟成用タンクに被害が出てしまいました。

現在ワイン生産者たちは、また地震が起こっても安全なように、通路やタンクの構造を見直しています。

生産されているブドウ品種

ニュージーランド最大の産地であるマールボロでは、この地域の全栽培面積の約78%の広さで白ブドウ品種のソーヴィニヨン・ブランを栽培しています。

「サヴィー」という愛称で呼び、ピーマンやアスパラガスのような爽やかで青っぽい香りを楽しんでいます。

この地域の生産者は「グラッシー」とよばれる青っぽさをしっかり引き出すために、収穫するタイミングやアルコール発酵の方法を試行錯誤しています。

また、シャルドネを「シャディ」と呼び、新樽比率の高い熟成向きでどっしりとしたシャルドネから、ステンレスタンクで発酵させたフレッシュでピュアな果実味を楽しめるものまで幅広く生産されています。

全体的に優しくまろやかで、比較的酸の穏やかなピノ・ノワールに、アロマティック品種のリースリングやゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリや、近年植えられはじめ注目を集めているスペイン系品種のアルバリーニョ。

黒ブドウでは、ボルドー系のブドウ品種であるメルローやマルベックといったものが、マールボロ地域で育てられています。

  • ソーヴィニヨン・ブラン
  • シャルドネ
  • リースリング
  • ゲヴェルツトラミネール
  • ピノ・グリ
  • アルバリーニョ
  • ピノ・ノワール
  • メルロー
  • シラー

マールボロ地方のテロワールについて

北側と西側に山のあるマールボロが現在の地形になったのは、数億年以上前に起こった巨大な氷河の侵食の影響があります。

そのため、栄養分となる有機物の多い土壌の表面が削られてしまい、痩せた土地になってしまいました。

また、沖積土と呼ばれる河川が運んできた小石の交じった土壌で(場所により粘土質もあります)、水はけがいいです。

肥沃な土地で、水はけがよいことにより、ブドウは生き延びるために、より深くに根を伸ばし、水分や栄養分を取りにいきます。

これにより、ひと粒ひと粒がバランスの取れたブドウになりやすくなります。

また、年平均2409時間の日照時間の長さと、朝寒く、日中は温かいという1日に寒暖差があること、そして冷涼な気候で、東海岸からの冷たい潮風により、ブドウがじっくりと成熟していきます。

これらの要素により、ブドウ生来の強い品種特性の表現されたブドウが栽培できるのです。

マールボロ地方内の主な産地

マールボロの中には、3つの栽培地域があります。

ワイラウ・バレー(Wairau Valley)と呼ばれるブレナムやラパウラ(Rapaura)、レンウィック(Renwick)といった主要なワイン産地が含まれている地域。

広くて平坦な谷底にあるこの地は、比較的温暖で乾燥していますが、冬には霜への対策をしなければなりません。

長い年月をかけて積み重なった水はけのよい深いシルトローム層を表土に、ワイラウ川からの砂まじりのローム層や沖積土、さらに砂まじりの砂利層があります。

これにより、しっかりと完熟した果実を収穫でき、フレッシュでジューシーなワインが仕上がります。

ソーヴィニヨン・ブランに最も適した土壌だと言われています。

次に、サザン・バレー(Southern Valley)。オマカ(Omaka)やブランコット(Brancott)といった丘に囲まれています。

3つの地域の中間で、ワイラウ・バレーよりも冷涼ですが、アワテレ・バレー(Awatere Valley)より温かい地域になります。

ワイラウ・バレーよりも粘土質とシルトローム層の割合が高く、ハーブのような青みがかった香りを引き出してくれ、より濃厚で重厚な味わいに仕上がります。

より良いピノ・ノワールが栽培されている地域です。

最後に、セドン(Seddon)という町を中心に広がるアワテレ・バレーです。

マールボロの中で、最も1日の中の寒暖差が大きく、冷涼で乾燥している地域です。

南島の東海岸に沿って位置する海沿いのエリアで、海からの風も強く、
芽が出るのも、収穫をするのも遅いです。

様々な年代の沖積土と粘土質の土壌が厚く堆積してます。その下には粘土質砂岩があり、さらに硬い砂岩も存在しています。

とても水はけがよく、乾燥しがちな土壌により、ブドウの根は水分と養分を求めて、より深くに潜り込んでいき、しっかりと凝縮した果実が作られます。

また、海からの強い風により、葉や木の成熟が制限され、ブドウの収量も少なくなります。

そして、果実も厚い果皮を身につけ、風から守ろうとしていきます。

これにより、果実味がしっかりとしていて、複雑味のあるワインが仕上がります。

  • Wairau Valley(ワイラウ・バレー):フレッシュでジューシーなワインの産地
  • Southern Valley(サザン・バレー):より濃厚で重厚なワインの産地
  • Awatere Valley(アワテレ・バレー):果実味のしっかりとしたワインの産地

マールボロワインの生産量

約530軒のブドウ栽培家がいるこの地域では、ニュージーランド全土の約66%、24,020haの栽培面積があります。

323,290トンのブドウが生産されています。前年比で、マールボロでは39%生産量が増えています。

約2億2375万リットルものブドウ果汁が2016年には作られました。

ブドウ品種別に見ていくと、約86%がソーヴィニヨン・ブラン、6%の割合でピノ・ノワール、その後は3.3%、3.2%、0.8%、0.9%と続いていき、シャルドネ、ピノ・グリ、リースリング、その他となっています。

ニュージーランド全体の輸出額の約75%のワインがマールボロ産のもので、12億4650万ドル。

ニュージーランド国内で消費されるワインは23%と生産量の4分の1以下でしかなく、それ以外はすべて輸出されています。

輸出量第1位は、イギリスで29.0%。

第2位は隣国のオーストラリアで27.2%、

第3位は近年輸出量が大幅に増えたアメリカで26.4%です。

とりわけ、アメリカではイタリア、フランスに次ぐ第3位の輸入量を誇ります。

マールボロワインのヴィンテージチャート

ヴィンテージチャート (赤ワイン)

年号 評価 年号 評価
2000 ★☆ 2010 ★★☆
2001 ★★☆ 2011 ★☆
2002 ★★ 2012 ★★
2003 ★★ 2013 ★★
2004 ★★ 2014 ★★☆
2005 ★★ 2015 ★★☆
2006 ★★ 2016 ★★
2007 ★★ 2017 ★☆
2008 ★☆ 2018 NT
2009 ★★

ヴィンテージチャート (白ワイン)

年号 評価 年号 評価
2000  ★★ 2010 ★★☆
2001 ★★☆ 2011 ★★
2002 ★★☆ 2012 ★☆
2003 ★★ 2013 ★★☆
2004 ★★ 2014 ★★
2005 ★☆ 2015 ★★☆
2006 ★★☆ 2016 ★★☆
2007 ★★☆ 2017 ★★☆
2008 ★☆ 2018 NT
2009 ★★

cf. Michael Cooper, Buyer’s Guide to New Zealand wines 2012, 2013, 2016, 2017, Auckland New Zealand: Upstart Press Ltd, 2011, 2012, 2015, 2016

マールボロワインの歴史

ブレナム空港に降り立つと、David Herdの像があります。

彼は、この地域で最初のワイナリーを立ち上げ、そして初めてのワインメイカーになりました。

彼がマールボロのサザン・バレーにあるフェアホール(Fairhall)エリアにブドウを植えたのは1873年のことです。

Herdは牧師のCharles Saxtonから購入した土地に、マスカットを植え、1905年に亡くなるまでマスカットから作られるワインを醸造しました。

年間約800リットルのワインを作り、それはHerdの死後も1931年まで続きました。

1880年頃には、ブレナムのおよそ30km北にある港町ピクトン(Picton)近郊のマウント・プレザント(Mt. Pleasant)にGeorge Freethがワイナリーを設立しました。

自身の敷地内では、赤スグリ(red currant)やセイヨウスグリ(gooseberry)を栽培し、ブドウやリンゴといった果実は他の栽培家たちから購入し、ワインやシードルといった果実酒を製造していました。

しかし、そのワイナリーも第二次世界大戦のあおりを受け、1958年にはクローズしてしまいました。

未だ、マールボロにはワインの波が来ていません。

1973年8月

ニュージーランドという国にとって、歴史的に重大な年になった1973年、Montanaはいくつかのカベルネ・ソーヴィニヨンとミュラー・トゥルガウの枝を植えました。

その当時、マールボロは羊と農地で知られる土地で、決してワイン用ブドウがよく育つなどとは思われていませんでした。

ニュージーランド最大のワイン生産会社だったMontanaは、輸出用ワインを造るためにオークランド(Auckland)ではない土地を探していました。

そこで、同社の創業者であるFrank YukichはMontanaのブドウ栽培家Wayne Thomasに様々な土地の土壌を調べさせ、レポートを作成させました。

そのレポートでは、マールボロがブドウ栽培に適していると報告されています。

すぐさまYukichはこの地の不動産業者であるJohn Marrisに連絡を取り、土地の売買契約をします。

ポケットマネーで返金不可の手付金を支払っていました。しかし、Montanaの取締役たちは首を縦にふりません。

偶発的に、マールボロの土地を手にしたMontanaはこの年の8月、静かに、内密にブドウの樹を植えました。

土地を手に入れたあとでも、マールボロでブドウを栽培するのは、「バカ」なことだと思われていたからです。

しかし、Yukichはこの当時から確信的に「この土地のワインは世界的に有名になる」と言い放っていました。

ワイン産業の勃興と病害

Montanaに続くように、1979年にはHunter Wines、TeWhare Raがそれぞれ土地を購入し、

ブドウを植え、85年にはCloudy Bayが立ち上がり、その後続々とワイナリーやブドウ栽培家が生まれました。

商業ワインが大々的に広まりはじめ、主にワイラウ・プレーンズ周辺にブドウが植えられました。

その当時、多くのヴィンヤードでは、ミュラー・トゥルガウのように収量が多く、栽培が比較的易しい「バルク品種」を栽培していました。

しかし、1984年フィロキセラという害虫が発見され、1992年までに全国的に広がってしまいました。

それと時を同じくして、ニュージーランド全体でワイン産業が落ち込み、ワイン、とりわけ土地に適していないブドウから造られたワインが、

過剰供給に陥ってしまいました。そのため、政府は栽培家にお金を支払い、ぶどうの樹を引き抜くようにお願いをしています。

これにより、マールボロの地に適さないブドウは引き抜かれ、フィロキセラ耐性のあるアメリカの台木を使用した、土地に適するブドウ品種を植えることが出来ました。

世界の表舞台へ

フィロキセラに苦しみながらも、1985年Montana、Hunter Wines、Cloudy Bayのワインがイギリスから注目を集めます。

その3年前には、Hunter WinesのファーストヴィンテージがNational Wine Showで6つのメダルを獲得し、

1986年、同ワイナリーの「Oak aged Sauvignon Blanc」がイギリスのSunday Times Vintage Festivalで受賞。

その後、1987年、1988年と続けて受賞します。

マールボロ地方で特に有名なワイン

「マールボロといえばソーヴィニヨン・ブラン」という印象を世界に与えたCloudy Bay、そのCloudy Bayから独立し、マールボロらしいソーヴィニヨン・ブランを追求しているDog Point Vineyard、そして日本人ながらマールボロの地で、日本人らしく繊細で、マールボロの土地の特性を引き出しているFolium。

それぞれ自分たちの持つ哲学を追求しながら、より良いブドウ造りをしているワイナリーです。

Cloudy BayTe Koko 2014

ニュージーランドでトップクラスの生産者として世界中で支持されているこのワイナリーのトップキュヴェである

このTe Kokoはマオリ語で「クラウディ・ベイ」という意味。

このキュヴェに使われるソーヴィニヨン・ブランはCloudy Bayがマールボロのラパウラ、ブランコット、レンウィックのそれぞれに所有する4つのブドウ畑の古樹に付いたものです。

そのため、ひと粒ひと粒にしっかりと栄養が行き渡ったエレガントで凝縮されたピュアな果実味を持っています。

2014年の4月1日から6日までの6日間で収穫されたブドウを、優しく圧搾しました。

ブドウ果汁をそのまま新樽率8%のフレンチオークに入れ、自然酵母によってゆっくりと着実に発酵させました。

2015年の春まで、樽で熟成し、2015年11月に瓶詰めされました。

グレープフルーツやネクタリンのような爽やかでありながら完熟した果実のまろやかさの感じられる香りやジャスミンの香りといったブドウ由来の香りと、贅沢に長く熟成をさせたことにより、レモンカードのような味わいになっています。

豊かな味わいでありながら、すっきりとしたソーヴィニヨン・ブランらしい酸味があるワインです。

牡蠣や伊勢海老といった魚介類やかつお節の出汁が出た蕎麦と共に楽しむことができます。

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Dog Point Vineyard Sauvignon Blanc 2016

Cloudy Bayにてブドウ栽培家とチーフワインメイカーを担っていた2人が独立して立ち上げたワイナリーです。

1970年から80年代に植えられたブドウを元に7.5トン/haに収量制限して、ブドウの果実が凝縮するようにしています。

全て手摘みで収穫したブドウを、房のまま圧搾し、発酵前に冷やして保管しました。

その後、2〜3ヶ月ステンレスタンクで熟成しています。一部のブドウは自然酵母で発酵させました。

ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランらしいグラッシーな青さとグレープフルーツやライムのような柑橘類の香りが元気な印象を与えます。

夏の夕暮れに、そら豆をおつまみに花火を眺めたながら楽しみたいワインです。

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Folium Vineyard Pinot Noir Reserve 2015

2010年6月に日本人の岡田岳樹氏によってブランコット・バレーに設立されたフォリウム(Folium)のピノ・ノワール100%のワインです。

「ワイン造りにとって重要な自然を全面に出したい」という哲学から、ラテン語で「葉」を意味するフォリウムと名付けました。

粘土質と砂礫や小石を含む河川土壌が重なり合った堆積土のブドウ畑に、1haあたり4,200本を植樹しています。

他のブドウ畑に比べて高い植樹率にすることで、より凝縮した力強い果実をつけることができます。

畑での収量制限や除葉といった徹底した管理をし、収穫期には完熟した果実を手で摘んでいきます。

こうして収穫された質の高いブドウを、ステンレスタンクで醸造し、新樽率25%フレンチオークで18ヶ月熟成させました。

赤いベリーの果実のアロマがしっかりと香り、樽由来熟成によって生まれるバニラやカラメルのような香りがあとから広がります。

しっかりとしたタンニンと酸味があるので、あと3年から5年ほど熟成させても、角が取れてまろやかな味わいになります。

どこか日本的な味わいを醸し出しているこのワインは、ニュージーランドの名産であるラムの肉と共に楽しんでもいいですが、

和牛とともに楽しむこともできます。

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まとめ

世界が注目するマールボロの地で生み出されるソーヴィニヨン・ブラン。

そして、その土地の恩恵に甘んじることなく、常に高みを目指し続けるブドウ栽培家とワインメイカーがいることで、

この地は注目されて以来ずっと変動が激しいワインの世界の第1線で活躍し続けているのかもしれません。

マールボロの地域におけるワイン産業の経済は、全体の約20%を占めています。

2013年9月には、この地域のスパークリングワインのグループ、Methode Marlborough(メトード・マールボロ)が立ち上がり、スパークリングワインのブランド化が進められています。

また、2017年にはマールボロワインの保護を目的としたグループPure Marlborough Wine(PMW)が設立され、高品質のワインと品質や価格を下げることで評価を得ている生産者のワインを差別化しています。

このグループには約30のワイナリーが参加してます。2018年には、中心地ブレナムにThe Wine Stationができました。

これらによって、さらに観光客が足を向け、マールボロワインの人気は高まることでしょう。