アルザスワインの特徴、当たり年やおすすめワインまとめ

Good Wine 編集部by Good Wine 編集部

2018.07.30 公開 | 2018.09.11 更新

今回詳しく解説するのは、フランスのアルザス地方についてです。

ボルドー地方やブルゴーニュ地方の影に隠れてしまいがちなアルザス地方ですが、歴史的な面や経済面からみても重要な位置づけにあります。

アルザス地方は他国との関わりがとても深く、歴史を遡るほどにそれがハッキリと見えてきますし、ワインの歴史にも欠かせない要素です。

アルザス地方のテロワールや格付けなどの知識から、アルザスワインの歴史や発展についても詳しくみていきましょう。

アルザスワインについて

フランスとドイツの国境に位置し、歴史的にも他国と深い関わりがあるアルザス地方。

現地で使われる言語や料理、建物などにもドイツっぽさがあり、それはワインに関しても例外ではありません。

フランス内のほかのワイン産地と違って内陸に位置しているため寒いだけだと思われがちですが、想像よりもはるかにブドウの栽培に適しています。

そのオリジナル性が高い産地であることから、特徴豊かなワインが生まれているのです。

ボトルがすらっと細長く緑色をしているところも、アルザスワインならではの特徴ですね。

2016年と2017年にフランスの各ワイン産地を襲った霜は、寒いといわれるアルザス地方でも被害をもたらしました。

とはいえ、世界的に問題になっている地球温暖化の影響で、アルザスワインの品質が下がりつつあるとの声も。

まずはアルザス地方のワインの特徴や気候、テロワールについて紹介します。

生産されているブドウ品種

アルザス地方で生産されるワインは、90%以上が白です。

その大半は辛口ですが、甘口の白ワインやスパークリングのほか、赤ワインもつくられています。

アルザスでは「高貴品種」といわれる4種類のブドウがメインです。

  •  リースリング
  •  ゲヴェルツトラミネール
  •  ミュスカ
  • ピノ・グリ

この4つの中ではピノ・グリは赤ワイン、それ以外は白ワインに使われます。

使われている割合は少ないですが、ほかにもたくさんのブドウが栽培されているのでいくつか挙げてみましょう。

  •  ピノ・ブラン
  •  ピノ・ノワール
  •  シルヴァネール

アルザスワインはこれらのブドウを単一で使い、ひとつのワインを仕上げていきます。

アルザス地方のテロワールについて

アルザス地方はパリから東に高速列車で2時間ほど行ったところにあり、ストラスブールやコルマールといった都市が有名です。

南北に縦に長くおよそ100kmに渡ってブドウ畑が広がっており、すぐ西側にはヴォージュ山脈があります。

この山脈が西からの偏西風を遮るので、緯度が高い割には温かな気候です。

山脈の西側で雨が降ってしまいアルザスまでは雨雲が届かず、フランス国内の中でも特に降水量が少ないのが特徴。

日照時間が長いですが標高が高く寒暖差が激しいので、ブドウ自体の成熟はほかの産地よりも遅い傾向にあります。

地殻変動によって地形が変化に富んだアルザス地方の土壌は、石灰岩や粘土、花崗岩や砂岩など様々です。

地域内でも細かく地質が異なるので、その場所ごとにテロワールを活かしたワイン造りがされています。

アルザス地方のAOC(格付け)について

アルザス地方の格付けは以下の3通りです。

  •  AOCアルザス・グラン・クリュ
  •  AOCアルザス
  •  AOSクレマン・ダルザス

いわゆる「特級」にあたるのがAOCアルザス・グラン・クリュですが、その割合はアルザスワイン全体の4%ほどと極わずか。

AOCアルザス・グラン・クリュは51リュー・ディ(特級地区)あり、白ワインのみが格付けされています。

これらのワインに使うブドウ品種も、高貴品種4つのみと決められているのです。

AOCアルザスはボトルに「アルザス 品種名」が記載され、複数の品種を混ぜてつくるワインもあります。

AOCクレマン・ダルザスは、瓶内二次発酵のシャンパーニュ製法でつくられた発泡性ワインの格付けです。

アルザス地方内の主な産地

ブルゴーニュやボルドーには及ばないものの、アルザスはフランス内の重要なワイン産地のひとつです。
しかし、アルザスは小さいワイン産地のためか、ボルドーのメドック地区やグラーヴ地区、ブルゴーニュのコート・ド・ニュイ地区やマコネ地区のように細かな地区に分けて呼ぶことがありません。

ただ、ワイン街道というルートに沿って町や村が点在しており、街道に沿って行くことで多くのブドウ畑や生産者を訪れることができます。

  •  オベルネ
  •  バール
  •  リクヴィル
  •  リボーヴィレ
  •  カイゼルベルグ
  •  エギスハイム

これらはごく一部にしか過ぎず、ほかにもたくさんの小さな村がありますが、これらはワイン街道の中でもとくに見どころが多い場所として有名です。

アルザスワインの生産量

アルザスワインの年間生産量はおよそ90万ヘクトリットルです。

※1ヘクトリットルは100リットルのこと。ボトルに換算すると133本。

その内で使われているブドウ品種の割合は以下の通り。

  •  ピノ・ブラン・・・25%
  •  リースリング・・・20%
  •  ゲヴェルツトラミネール・・・12%
  •  ピノ・グリ・・・17%
  •  ピノ・ノワール・・・11%
  •  その他

栽培面積やセパージュから言っても、アルザス地方では高貴品種がメインであることが一目瞭然です。

アルザス地方のワインは3割近くが輸出に回されており、ベルギーやドイツ、北欧諸国やア北米への輸出が多くなっています。

国内外ともにクレマンの伸びがよく、フランス国内の発泡性ワインの売上のおよそ80%がアルザス産です。

高級品として一目置かれるシャンパーニュとは違い、価格帯が手頃なのにも関わらず品質が高いことでフランスの家庭で親しまれています。

アルザスワインの歴史

フランスにぶどうとワイン造りが広まったのは、ローマ時代から1世紀にかけての間です。

「キリストの血」とも呼ばれたワインは宗教と密接であり、修道院で管理・生産されるようになりました。

とくに、ストラスブールの教会が周りの地域に布教の役目を果たし、各地に修道院が立てられたことでアルザス地方でのワイン造りが盛んになったのが始まりです。

9世紀頃にワイン商人が活躍

司教や修道院は、商人を使ってつくったワインを販売していました。

ベルギーやドイツ、スイスなどの近隣国だけでなく、現在の北欧諸国周辺にまで渡り貿易を拡大するとともに、ワインの生産者である司教や修道院に多くの利益をもたらします。

富を築いたのは商人も同じで、ワインの他にも様々な商品を輸出・輸入し、アルザス地方の発展の基盤をつくったのです。

17世紀にアルザスが衰退

商人の活躍により富が形成され、アルザス地方はストラスブールを中心に力をつけていきましたが、30年戦争の勃発によって勢いを失います。

宗教紛争から始まった30年戦争は西ヨーロッパを大きく衰退させ、その影響はアルザス地方も例外ではありませんでした。

とくに抗争が激しかったライン川流域で経済圏を築いていたアルザス地方は、戦争の打撃を大きく受けてしまいます。

30年戦争で貿易の道が失われたことやペストの流行などの不幸が重なり、ブドウ畑を捨てざるをえない市民が続出。

大都市へ避難していく市民が跡を絶たず、活気を失っていくアルザス地方とワイン造りでしたが、

そこへ同じく戦争の影響を受けたスイスやドイツの人々が移住してきたことで難を逃れます。

新しい住民が都市を形成し、ブドウ栽培とワイン造りを蘇らせたのです。

18~19世紀

戦争や病気によって都市が崩壊して人口が減り、衰退したアルザスワインは第一次世界大戦の後に再び盛り上がります。

第二次世界大戦後にはアルザスワインの品質管理を徹底し、品質の高いワインをつくろうという考えのもと、

1962年にAOCアルザス、1975年にAOCアルザス・グラン・クリュ、1976年にAOCクレマン・ダルザスの格付けが認定されました。

アルザスワインで特に有名なワイン

複雑なテロワールとブドウ品種の巧みな組み合わせで、個性が豊かなワインをつくるのが特徴のアルザスワイン。

ここでは、とくに知名度が高いワインや生産者を紹介します。

日本でも手に入れやすいものが多いので、アルザスらしい凝縮感がある果実味と酸味を体験してみましょう。

アルザスイチの生産者「トリンバック」

日本の大きめのスーパーでも買えることが多いトリンバックはフランスのソムリエからの信頼が厚く、ミシュラン3つ星を獲得した全レストランに置かれています。

世界最高峰のリースリングとも言われ、コストパフォーマンスが高いワインとしてワイン好きからも絶大な人気を誇る生産者です。

日本でも有名な「ヒューゲル」

世界的にも知名度が高く、日本でアルザスといえば「ヒューゲル」を思い浮かべる人も少なくありません。

エチケットは黄色がテーマカラーで「トリンバック」と似た印象がありますが、手頃な価格帯から高級グラン・ヴァンまで取り揃えています。

家族経営の造り手「レオン・ベイエ」

レオン・ベイエ社は家族経営で比較的小さな造り手でありながら、アルザスで栽培されているブドウのほとんどの品種を使ってワインをつくっています。

世界の著名人やプロが高く評価をしており、美食とともにマリアージュを楽しむためのワインをつくる生産者として有名です。

まとめ

アルザスワインのブドウ品種はほぼ4種類に絞られるものの、小さな地域の中に様々な土壌があることによって個性的なワインが生まれます。

隣のドイツやスイスのイメージが強いですが、その気候は思ったよりもブドウの栽培に恵まれており、ワインに地方らしい特徴を与えているのです。

戦争や疫病などのダメージは大きかったですが、他国との交流によって発展してきたアルザスワインは、他国との関わりなしには大きく成長できなかったでしょう。

高級なワインもさることながら、手が届きやすい値段で個性を感じられるワインが多いのも、アルザスワインの面白いところです。