ラツィオ州のワインの特徴、当たり年や主なワイナリー

Good Wine 編集部Good Wine 編集部

2018.11.14 公開 | 2018.11.14 更新

ラツィオ(LAZIO)州は、約3000年もの歴史を持つ永遠の都ローマ(ROMA)を州都とするイタリア中部の州です。北はトスカーナ(TOSCANA)州、西はティレニア(TIRRENO)海、東はアペニン(APPENNINO)山脈がウンブリア(UMBRIA)州とアブルッツォ(ABRUZZO)州との境をなし、南側にはカンパーニャ(CAMPAGNA)州があります。

現在のイタリア共和国の首都であり、政治や経済の中心地ローマがあるにもかかわらず、ローマ周辺には火山を起源とする大きな湖がいくつもあり、その周辺の丘陵地にブドウやオリーブの畑が広がっています。

歴史的に古代ローマ皇帝やキリスト教のローマ法王、有力な貴族などに愛されてきた古くからのワインが今でも作られていますが、どちらかというと、現在では日常的に庶民の間で楽しむワインとして飲まれています。

ラツィオ州のワインについて

ラツィオ州の州都ローマの旧市街地の中心に、ラツィオ州立のエノテカ「VyTA Enoteca」があります。

ラツィオ州の特産の素材に合わせたラツィオ州のおいしいワインが飲めると、観光客のみならず、地元の人にも人気のエノテカです。

近年、ラツィオ州では州をあげてワイン、オリーブオイルなどの農産物の生産に力を入れていて、生産者のための国内外のイベントの開催や、農業に関するさまざまな情報を生産者に提供する無料のコースの開催なども行っています。

その甲斐もあって、ここ5年間ワインを含めた農産物の輸出量が飛躍的に伸びています。

2017年は、天候不順のために収穫量がかなり減少したラツィオ州。2018年も、厳しい夏の暑さと8月の雨でブドウの収穫量が心配されましたが、順調に収穫をあげていて、昨年より15%の増加が予想されています。

大きな気温差があったために、ワインの品質も期待されています。

生産されているブドウ品種

ラツィオ州では白ワインが有名で、主にマルヴァジーア・デル・ラツィオとトレビアーノ・ジャッロが多く使われています。またグレケットは州北部のウンブリア州との州境にあたる地域で、栽培されています。

赤ワインは、ラツィオ州土着のブドウ品種チェサネーゼが特徴的ですが、そのほかにもサンジョベーゼ、モンテプルチャーノなどをはじめ、メルローなどの外国品種も使われています。
• アレアーティコ
• ベッローネ
• チェサネーゼ・コムーネ
• チェサネーゼ・ダフィーレ
• グレーコ
• グレケット
• マルヴァジーア・ビアンカ・ディ・カンディダ
• マルヴァジーア・デル・ラツィオ
• モンテプルチャーノ
• ネーロ・ブオノ・ディ・コーリ
• トレビアーノ・ジャッロ
• サンジョベーゼ
• メルロー

ラツィオ州のテロワールについて

ラツィオ州は約半分の54%が丘陵地で、平野部は20%、山岳部が26%という地形をしていますが、ワインに使われるブドウは、主に日当たりの良いなだらかな丘陵地で栽培されています。

ティレニア海に面したラツィオ州の西側は地中海性気候です。海から吹く風のおかげで、冬は暖かく夏は涼しいブドウの栽培に適した気候をしています。

一方内陸部は、朝晩や季節による気温差がかなり激しい大陸性の気候です。

古くからのワインの産地として有名なカステッリ・ロマーニ(CASTELLI ROMANI)地区は火山由来の土壌で、砂質、粘土質、泥灰質の沈殿物からなる複雑な構成をしています。

また、チェルベテリ(CERVETERI)などの北部の海岸沿いのエリアも火山由来の沖積層で、粘土石灰質の土壌をしています。

一方チルチェオ(CIRCERO)などの南部の海外沿いのエリアでは砂質と粘土質で、ミネラル分を多く含んでいます。

ラツィオ州の格付けについて

ラツィオ州は長いワインの歴史があるにもかかわらず、古くから有名な白ワイン、フラスカーティ・スーペリオーレとカンネリーノ・ディ・フラスカーティ、そして赤ワインのチェサネーゼ・デル・ピーリオの3つのみがDOCGワインです。

一方、DOCはピエモンテ州、トスカーナ州に次いで3番目に多い27銘柄あり、IGTは6銘柄です。

ラツィオ州の主な産地

ラツィオ州は、火山を起源とする湖が多く、その周辺にブドウの栽培に適した丘陵地帯が広がっています。

古代ローマ時代の記録にもたびたび登場するカステッリ・ロマーニ地区は、風光明媚で夏でも涼しい快適な気候のために、古代ローマ皇帝、ローマ法王など有力者の夏の避暑地としても有名です。

周辺の日当たりの良い斜面で、権力者のためのワイン用にブドウが栽培されてきました。

州の北部にあるモンテフィアスコーネ(MONTEFIASCONE)では、8世紀ころの美味しいワインの伝説を持つ世界的に有名なワイン「エスト・エスト・エスト」の産地です。

また、南北に長いティレニア海岸沿いの平地一帯でも、温暖な気候を利用して栽培されたブドウから良質なワインが作られています。

• カステッリ・ロマーニ:ローマの南西にある丘陵地。ワインの産地として歴史的に有名
• モンテフィアスコーネ:州北部にあるボルセーナ(BORSENA)湖を中心とした丘陵地。

ラツィオ州のワイン生産量

ラツィオ州は2017年、1,042ヘクトリットルの生産量で、前年比が32%と大幅に減少しています。赤ワインとロゼが24%、白ワインが76%と、圧倒的に白ワインが多く生産されています。

一方、2017年の輸出量は2016年に比べて16%増加して輸出額は62百万ユーロでを記録しました。イタリア全体でみると決して輸出量の多い州ではありませんが、イタリアワイン全体の輸出額の増加平均が6%に比べても、順調に毎年輸出額を伸ばしています。

ラツィオ州のワインの歴史

古代ローマ以前

ラツィオ州には、古代ローマ時代以前の紀元前8世紀ころから繁栄していたエトルリア人の都市がいくつもありました。

これらの都市では、すでにワインを楽しんでいた様子が、数々の遺跡の壁画に残されています。

古代ローマ時代には、古代ローマ帝国の首都ローマを中心に、帝国の拡大とともにワインの消費も格段に増え、ワイン作りの技術も大きく発展していきました。

皇帝や貴族の別荘地が多く築かれていたカステッリ・ロマーニ地方は、当時、美味しいワインの産地としてすでに名声を得ていました。現在、スーペリオーレがDOCGに認定されているフラスカーティも、紀元前1世紀にはすでにその名を知られていました。

中世からルネッサンス

古代ローマ帝国の崩壊後、帝国の中心だったローマは混乱の時代を迎えますが、中世になると、キリスト教の修道院によって、ブドウの栽培が再び盛んになり、ワイン作りにも力を入れていきます。

ルネッサンスになると、王侯貴族のような生活をしていたローマ法王たちによって、地元のラツィオ州のワインは重宝され、とくに、ワイン好きで有名だった16世紀のパオロ3世がフラスカーティを愛飲していたと記されています。

近代以降

1923年にイギリスの女王がフラスカーティのワインを気に入り、イギリス宮廷に持ち込んだことによって国際的な評価を得ます。

ところがラツィオ州もフィロキセラの被害にあい、その後、質より量のワインを大量生産していく時代を長く過ごすことになります。

現在では1ヘクター当たりの生産量は大きく増えていて、今度は品質に重視したブドウ造りをしている生産者も多く、ラツィオ州のワインの質も向上してきていると評価が上がってきています。

ラツィオ州で特に有名なワイン

ラツィオ州のワインは、日本国内ではまだかなり知名度が低く、フラスカーティなどのDOCワインも、残念ながら、安い白ワインという印象が強いようです。

エスト・エスト・エスト(カンティーナ・ディ・モンテフィアスコーネ)

8世紀、ローマ法王に謁見するためにローマに向かっていたドイツの聖職者が、従者に美味しいワインを見つけたら「ある」という意味の「エスト」という印を残すように言い渡して先に送り出したところ、モンテフィアスコーネで飲んだワインがあまりにもおいしかった従者が「エスト、エスト、エスト」と3回も書いたという有名なエピソードも残っています。

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フラスカーティ・スーペリオーレ(ポッジョ・ディ・ヴォルピ)

古代ローマに起源をもつ有名なワインで、1966年のイタリア初の格付けでDOCに認定されていて、2011年にスーペリオーレがDOCGとなりました。

火山由来の土壌から生み出されるだけあって、ミネラル分が豊富でフルーティな飲み口は、ラツィオ州の根強い人気です。特にDOCGのスーペリオーレがおすすめです。

ポッジョ・ディ・ヴォルピは1990年創業のまだ新しいワイナリーですが、丁寧なブドウの栽培と最新技術を用いた品質管理のもとに作られるワインは高く評価されています。手軽な値段で飲めるのも嬉しいワインです。

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まとめ

ラツィオ州は、イタリアの首都ローマがあるにもかかわらず、ワインに関してはこれまで少し他の州に後れを取ってきた感があります。あの古代ローマの皇帝たちやローマ法王など歴代の絶対権力者に好まれたワインというイメージよりも、軽い白ワインというイメージの方が強いような印象です。

ブドウの栽培に恵まれた気候で、ミネラル分たっぷりの土壌を持つラツィオ州は、ワイン造りに関して、これからが期待されている注目の州です。